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頼まれ上手のAさんのこと

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Aさんが天城ハイランドに越して来て数年になります。Aさんはひとり暮らしです。奥さんがいらっしゃったとは聞いていますが、死別されたのか離婚されたのかはよく分かりません。息子さんと娘さんもいらっしゃるようですが、尋ねて来られたことは一度もありません。Aさんはいつも洗いざらしの作業着を着て、まるで伊豆の土着のお百姓さんのように見えます。

Aさんは聞き上手です。と言うより進んで自らのことを話すことはありません。実は、ご家族のことも何とはなくぼそっと話した言葉を私が後からつなぎ合わせただけなのです。田舎では出会いがしらの立ち話が日課ですから、深くうなずきながら相手の話を真剣に聞いているAさんの姿をいつも見受けます。

Aさんはいつも笑顔です。そして人が自分にしてくれたささいなこと、たとえばAさんの健康を気遣うような言葉にさえ大げさと思えるほどに感謝します。

Aさんは同時に頼まれ上手です。なにしろ、いつも相手に感謝することばかりなんですから、お返しに何かをする理由にこと欠きません。相手に何かをしてあげても決して恩着せがましくはなく、「○○でお世話になったけど、何もお返しできないからせめてこのくらいはさせてほしい…。」と体を小さくしてボソボソとすまなさそうに言うだけなのです。

Aさんは固定電話を引いています。Aさんは少しくらい遠い人でも嫌な声ひとつ上げたことはありません。だから、どうしても携帯しかない人への取次ぎの用事をお願いすることが多くなります。頼まれたときAさんはいつも、世話になってばかりで心苦しかったからこんなことで少しばかりの恩返しをさせてもらえてありがたい、と言います。

Aさんは決して人格者ではありませんが、みんなから好かれています。

…でも、少しだけ寂しそうにも見えます。

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