かくして二人の作戦は成功して…
Fさんは、数年前に還暦を迎えました。
長らく勤め上げた会社に役職定年で残ることもできましたが、友人の会社社長がどうしてもと言うので、まあ週に2~3日、なんてつもりが、今では会社にとって欠かせない戦力になってしまって…定年時に立てた計画は急遽変更。天城ハイランドには、月に2~3日しか来ることができなくなってしまいました。
Fさんには、目の中に入れても痛くないほどかわいい孫の正太クンがいます。
今年小学校5年生になる正太クンは、都会の小学校に通っているフツーの子供です。Fさんは密かに期するところがあって、正太クンがまだ小学校に入る前から、釣りの特訓をしてきました…と言いたいところですが事実は、正太くんを天城ハイランドに連れて来ると、Fさんのそばを片時も離れないので、結局はFさんと白田の突堤で過ごす時間が多くなってしまった、だけのことなんです。だから正太クンは、都会の子らしくなく、ミミズやゴカイを平気でつまんで針につけます。
さて、正太クンのママの登場です。
ママは正太クンを某有名私立中学へ入学させるというの大きな野望を抱いています。
ママは正太クンには、年3回の休みに進学塾に通ってほしいのです。天城ハイランドさえ無ければ、正太クンは塾に行くかも知れない。だから、ママは天城ハイランドが大嫌いなのです。ママは舅のFさんには、遠慮があって直接言うことが出来ない分、Fさんの息子、つまり自分の亭主に愚痴をこぼします。
ところで、天城ハイランドにはK大を出て中高一貫の有名私立学校の先生を退職されたCさんがいらっしゃいます。Cさんは、気さくでいばらない方で、Fさんとは立ち話仲間です。一度、Fさんの弟子入りをして釣りを始めてみるか、なんて話をしています。Fさんは一計を案じて、Cさんに正太クンの家庭教師になってもらう、と言う話を作りました。Cさんには、ことの成り行きだけは話ましたが、せめて1回だけでも家庭教師の真似事を…なんてことも一切お願いはしませんでした。
ママは半信半疑。でも、Cさんの経歴を聞けば反対することもできません。そこで、正太クンは、今年の夏休み、ママのお許しを得て山のような参考書を抱えて天城ハイランドに来ました。これで、正太クン、夜は参考書と首っ引きなら、とりあえず八方丸く収まるのですが、私はFさんからそんな美談は聞いていませ ん。Fさんと正太クンは、完全な共犯ですから、絆がますます強くなったことは事実でしょう。でも、この話、めでたしめでたしなんでしょうか。。
実は、このお話のタイトル「嫁退治」は、Fさんの言った言葉をそのまま使わせて戴きました。実態は、退治と言うより「嫁だまし」に近いと思いますが、私はある意味Fさんに感心しています。
嘘は、いずれバレるでしょうし、賢明なFさんが分かっていないことはありません。
いくら孫のためとは言え、こんな嫁退治まですれば、Fさんが将来かなりの責任を背負い込むことは間違い無いことでしょう。また、正太クンにとっての良し悪しは、一生かかっても結論の出ない難しい問題です。しかし、Fさんは程度の差こそあれ将来の修羅場を覚悟しています。
そして選択し実行したのです。
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